
主要作品
2022年は、造形を機械に置き換えると制作と形の判断がどう変わるかを研究しました。作品のコンセプトとともに、データから実物へ移す過程や、加工で生じた課題を紹介します。
2022年の制作研究を読む ↗
写真を大きく見る ↗Four automatically generated objects
機械による反復と、残された不確かさ
形状や表面の質感を変えたオブジェクトを、矩形の額縁に配置した作品です。鑑賞者と制作者がそれぞれ思い浮かべる「主観的な美的価値」とは何かを考えました。
コンセプトと制作
属人的な制作から距離を取りたいという思いと、技術への関心から、制作の自動化に取り組みました。参考にしたのは、芸術家の内面性やオリジナリティを中心に据えず、「機械のように」制作するポップアートの姿勢です。
造形作業を機械に置き換え、作者固有の技術や作業への依存を減らしました。工房制ではなく、個人で完結できるパーソナルファブリケーション(PF)の仕組みをつくることも目的でした。従来の工房を中心とした制作とは異なる方法を、自分の工程に取り入れようとしています。
額縁の中に反復する形は、大量生産システムでつくられる製品を思わせます。一方、加工時に部材を切り離さないための「タブ」は、通常なら後から取り除くところを残し、予測しきれない形の変化が生じる余地を設けました。
この反復と差異の関係には、シルクスクリーンによる大量生産的な反復と、人の手が残る版ずれの構造を重ねています。機械に任せることと、完全には揃わない形が共存することを考えた作品です。
Objects with Holiness
イメージを解体し、別の形へ戻す

写真を大きく見る ↗コンピューターソフトウェアによる自動生成を使った実験的な作品です。漫画をサンプリングして現代美術へ取り込んだポップアートの絵画『Seductive Girl』(1996)を参照しました。
コンセプトと制作
原画をトリミングし、ポップアートを象徴するドットを抽出しました。SVGへの変換、図面化、座標化を経て、アルゴリズムによる形態生成へつなげています。造形も機械で自動化し、人の造形判断をなるべく排除する方向を目指しました。
背景にあるのは、特定の人物や出来事の像が遠ざけられ、曖昧になることで、個別のイメージが普遍的な存在や一種の「聖性」へ変わり得るのではないか、という考えです。写真から写した像の輪郭をぼかす表現や、写真をモノクロ化してシルクスクリーンへ転写する表現を、その参照としました。
人の手による造形に見えにくい抽象的な形が、原画とは異なる読み方を促し、鑑賞者それぞれの体験を呼び起こすのではないか。イメージを解体し、機械を介して形に戻す工程は、作品に「聖性」を持たせることができるのかを問いとしています。
形状の解析、CAM、加工シミュレーション、ポスト処理を経て、自動加工しました。
Prototyping with Generative Design
接続位置を残し、形をつくり直す

写真を大きく見る ↗ジェネレーティブデザインを使い、それまでの試作の形を改善すると同時に、新しい形を得ようとした作品です。設計者がソフトウェアへ条件を与え、モデルを生成する技術を取り入れました。
コンセプトと制作
取り組んだのは、条件を与えてモデリングを自動化することと、複数のパターンを同時に比較して「見たことのない形」を探すことです。位置合わせ用の6mmダボと花のビス止め位置の座標を取り出し、接続する場所を条件として残しながら、別の形を生成しました。
生成した形のイメージは、ツタのような植物にも、河川のような無生物にも広がります。この形を考える際には、1996年に提唱された「コンストラクタル法則」を参照しました。生物と無生物を流動機構として捉え、異なる現象を共通の原理から考える視点です。
私は、作品の樹枝状の構造に、流れるものが通りやすい配置へ形を変えていく傾向を重ねて見ています。
図面から座標を取り出して形を生成し、3Dプリントで検討しました。解析、CAM、加工シミュレーション、ポスト処理を経て、自動加工へ進めています。「プロダクト的工業化」と「アートのコンテクスト」をつなぐことを目指した初期の作品です。


























